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国内の結核について |
| →国内の結核についての資料リスト |
結核中進国日本 |
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「戦前・終戦直後は「亡国病」とまでいわれ、総死亡の1割以上を占めていた日本の結核は、戦後は順調に低下して...」とはよくいわれることであるが、それで結核の問題が無くなったと「勘違い」されることも珍しくない。市井の話ならば笑ってもすまされるが、行政や医療界でそうとられているとしたらことは重大である。図1は日米の結核死亡率、罹患率の推移をみたものである。日本の結核罹患率(人口十万あたりの発生患者数)は最近は米国の4倍、時代的には40年ほど遅れているのである。戦争前、いな20世紀初頭からの(産業革命の時期の遅れによる)結核流行の波の到来の遅れの影響をそのまま今に引きずっているのである。順調に下がっていたのは1970年代までで、80年代には減り方が減速し、1990年代の終わりには一時逆転上昇まで経験した。2000年代に入ってからは低下傾向にあるが、結局80年代からの延長上に戻ったに過ぎない。 とはいってもかつてに比すれば「低蔓延」に至ったことは確実であり、それとともに必然的に結核問題が特定の階層、集団に集中的・限定的に起こるようになった。特定階層とは以下の3つにまとめられる。 (1)高齢者:最近日本で発生する患者の60%が60歳以上である。これはこの年齢階層が高蔓延時代の波をかぶっていることによる。すなわち、いまの60歳代は35%、70歳代で58%、80歳代74%が結核既感染で、これが患者発生母地になっているからである(これに対して、20歳代での既感染率は1%、30歳代でも3%に過ぎない)。これに最近は糖尿病やがん、免疫抑制剤治療といった高齢化に伴う病気が結核発病を促進している問題が加わる。 (2)医学的リスク集団:糖尿病、慢性腎不全、悪性腫瘍、免疫抑制剤治療(副腎皮質ホルモン剤、抗TNFα製剤など)、塵肺などといった特定の健康問題のために結核発病が促されることがある。最近の患者の4割程度がこのような医療上の問題を持っている。 (3)社会経済弱者:ホームレスは極端としても、生活困窮者、もう少し幅広く小規模事業所従業員など、健康管理の機会に恵まれない人々である。ホームレスでは罹患率が人口十万対1000を超えることもある。この階層の人々に結核が多い原因は必ずしも明確にされていない。おそらく様々な生活上の困難からくるストレスが結核発病を促し、治療を阻害し、また結果的に感染伝播を促すのであろう。またこのような階層から一般人口への感染の伝播も当然ある。 |
ハイリスク集団としての外国人 |
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社会経済的ハイリスク集団として近年注目されるのが、結核の高蔓延国から様々な目的で日本に入ってくる外国人である。すでに欧米ではこのような患者がそれぞれの国の患者の主要部分を占めるようになって久しい(図2)。オーストラリアの80%は特別としても、大半の欧米諸国では発生患者の半数以上が「外国生まれ」である。日本におけるその割合は3%にすぎないのを見れば、ここでも日本の結核の「中進国」ぶりが感じられる。高蔓延国からの入国者からの結核発病があっても、日本人の罹患率水準が高いためにその影響が出にくいのである。しかし、その日本でもこの数年間の推移を見れば、この問題は近い将来には決して無視できないものになることが考えられる(図3)。さらに登録から漏れている外国人患者があることもじゅうぶん想定すべきである。そのような患者こそ治療支援上、感染防止上の問題を多く持っている可能性が大きいことも考えなければならない。 2005年の日本における新登録患者総数は28,319人、うち外国人結核患者は923人であるが、この外国人の割合を年齢階級別に見たのが図4である。15-19歳では12%、20-29歳で16%、30-39歳で10%となっており、就労者の多い年齢(しかも日本で罹患率の低い年齢)では、既に日本でもある程度まとまった位置を占めつつあることが知られる。 さらに日本の国内でも都道府県別に見ると図5のように、群馬県の10%をはじめとしてそれに近い県市がいくつもある。さらに保健所別にみれば30%を越える所もまれではない。このように、移民結核の問題は日本でも既に現実の問題になりつつあると考えるべきである。彼らの職業の分布を日本人患者と比較したのが図6で、学生、臨時・日雇いが多く、常用勤労者が少ない。日本の現行の結核統計では患者が日本国籍であるか否かは知られても、国籍そのものはとっていないが、図からみて結核を発病している外国人は、学生は別として「高蔓延国からの就労者」が中心であることが頷かれる。 国の統計1) によれば、登録されている外国人は全人口の1.6%であり、それらの外国人の国籍は多い順から韓国・朝鮮、中国、ブラジル、フィリピン、ペルー、米国、その他となっている。これから単純に考えても外国人の罹患率の日本人の2倍以上(年齢分布を考えれば発病リスクは当然その何倍にもなる)で、それは出身地(国籍)からもうなづける。WHO推定2) による2004年のこれらの国の罹患率は、それぞれ90(韓国、北朝鮮は178)、101、60、293、178、5(いずれも人口10万対、ちなみに日本は30)である。日本在住者の数は小さいが、高蔓延国という点では南アフリカ718、ザンビア680、カンボジア510という水準の国もある。 |
世界の結核の動静 |
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ここで「あふれ出し」の源になる国々の状況をもう少し見てみたい。WHOの推計によれば、全世界では2004年で推定890万の患者が発生し、そのうち390万が塗抹陽性である。地域的に罹患率を見るとアフリカが356/10万で最高、また量的にはアジアが半数を占める(インド、中国、インドネシア、パキスタンで発生する患者数を合計すると全世界の48%)。 これらの地域での患者発生の増減の趨勢を図示したのが図7である3) 。世界的には1995頃に年間1.5%という増加率であったが、DOTS戦略の展開とともに2004年までにはかなり増加傾向に歯止めがかかった。現在なおも続いているごくわずかな増加は、アフリカの2地域(HIV流行の多い地域での激増、およびHIVがそれほど多くない地域の微増)のためである。また比較的最近まで増勢にあった東欧(旧社会主義諸国、薬剤耐性結核の多発という深刻な問題がある)ではやっと火は鎮まった。その他の地域は緩やかながら減少傾向に転じている。しかし、これら途上国の多くで罹患率が100を越える高蔓延の状態にあり、結核はこのような地域からまさに「あふれ出し」て、低蔓延諸国にしみ込んできているのである。 図8は国の結核罹患率と所得(1人当たりGDP)の相関を見たものである。図8aからは、結核がまさに低開発病、貧困国症候群となっていることが見てとれる。このような国々から仕事を求めて、あるいは政治的な理由から人々が潜在結核感染をもって低蔓延国に入国するのである。ついでに図8bには、日本は高所得国としては不釣り合いに結核蔓延が高いことが示されている。 1980年代、先進国では「結核根絶」が盛んに議論されたことがある。しかしその後この議論はほとんど影を潜めている。地球がますます狭くなるにつれて途上国=高蔓延地域からの結核あふれ出しがますます露わになって、一国だけの、その国で生まれた人だけの「結核根絶」を云々することがナンセンスであることが認識されてきたのである。途上国の結核問題は、先進国の国内問題となりつつある。米国では隣のメキシコから入ってくる人々の米国内での結核対策に、メキシコの結核対策を援助した方が費用効果的であるという議論も行われている4) 。 |
外国生まれ患者の結核対策 |
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カナダ・オンタリオ州では1990−97年に発生した結核患者の78.7%が外国生まれであったが、出身国別にみた結核罹患率は、カナダ生まれ(先住民を除く)住民を1として、アフリカ95.5、インド29.0、中国20.8、その他のアジア32.5等となっている5) 。年齢別に見ると、罹患率は16-30歳という青年期にひとつピークをもっており、若者が既に高率に感染を受けていることが示唆される。また入国からの期間と発病の関係は、入国後1年目が高く、その後徐々に低下する。これも本国で感染を受けてから間もない時期に発病しやすいことを反映しているとみることができる(入国当初の精神的ストレスを多発の原因とする考え方もある)。この傾向は日本でも見られている6) 。 この観察は外国生まれ患者の結核対策に重要な示唆を与える。つまり出身国で感染を受けた者に対する入国後早期の発病の発見・予防が重要である、そのためには入国時のふるい分け、リスク評価と既感染者への発病予防策、その後の早期発見が有用と考えられよう。多くの欧米諸国では留学や就職に際して、渡航前に健康診断証明書を求め、有病者には治療後治癒の証明を求めた上で渡航を認めている。亡命希望者や難民に対しては、多くのEU諸国やスイスでは入国時点(空港など)で検診を行い、その後定住先の保健所で追跡を行っている7) 8)。患者発見率は出身国にもよるが、十万対100〜2228にもなるという。オランダではこの検診は「ハイリスク検診」のひとつに位置づけられていて、発生する患者の数%を発見している。予防投薬を積極的に行っている国もあるが、規則的な治療継続はかなり困難のようである。 また発生した患者の治療も重要である。社会経済的(医療費、入院や通院の困難さ)、また心理的問題(意思疎通、不安感など)を克服して治療を完遂するための、強力なDOTSによる患者支援が欠かせない。さらにこのような患者は薬剤耐性のことが多い(出身国にもよるが)ことも知られている。やや古い知見になるが、日本でも外国人患者の治療成績は不良であるとされる9) 。つまり全国の保健所を通してふりかえり調査された1991-93年の外国人結核患者の治療完了率は平均51%(一般では少なくとも75%程度と考えられる)で、これは毎年悪化する傾向が見られるという。 外国から来た人が持ち込んだ病気という点では「輸入感染症」の性格はもっているが、もともと国内にあった部分が圧倒的に多い現状では、外国人の結核は日本のなかのひとつのハイリスク集団の結核問題ととらえ対応すべきである。そのためのDOTSをはじめとする公的サービスおよび民間のサポート活動(例えば結核予防会の「外国人結核相談事業」のようなもの10)−ここでは英語、中国語、韓国語の面接・電話相談なども行われている」が向上することが望まれる。同時にいわば「外なる国内問題」ともいうべき途上国の結核の対策への協力は今後さらに強化しなければならない |
文献 |
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結核に関する行政の動き |
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■ 厚生労働審議会 感染症分科会結核部会「第15回厚生科学審議会感染症分科会結核 部会資料」は厚生労働省ホームページの以下のページURLからアクセスをすることができます。 |
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【結核に関する特定感染症予防指針の一部改正について】 平成23年5月16日、厚生労働省健康局結核感染症課より特定感染症予防指針の改正が発表されました。
「結核に関する特定感染症予防指針」改正の主なポイント
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110518H0020.pdf |
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